【実話】アタシの値段~a period~
先ほどのユキとの会話を思い返す。
"言い訳とかしないの?"
"しない"
言い訳をしなかったのは
それが自分にとって楽な道だったからかもしれない。
"騙している"
という事実を
これ以上、背負う事が怖かった。
全てを明かせば
楽になれると
俺はどこかで思っていた。
ユキの心を
壊すことだとも考えずに。
「…そうかもしれないな。俺はいつも自分が大事で
なんの罪もないユキを巻き込んで…
何やってんだろうな…」
浩介は
いつもユキの気持ちを
一番に考えている…
こいつには敵わない。
電話越しに伝わる怒りから
そう気づく。
「……やっぱ無理だ。お前にアイツは重すぎるし
アイツにもお前は重すぎる。
…悪いけど、お前にユキを幸せにできるとは思えねぇ。」
その後に浩介が
言い放った言葉は
俺が何よりも恐れていたものだった。
「ユキは俺がもらう。」
手を退け、と。