【実話】アタシの値段~a period~
『ごめんね、こんな時間に。』
どうしても独りじゃ苦しくて
あの後
浩介に電話で経緯を話したら
浩介はすぐに来てくれた。
「どうせちょうど会社出るとこだったし。」
そう言ってネクタイに指をかけた浩介は
アタシが差し出した珈琲を受け取りながら
ソファに腰かけた。
『メガネ、外し忘れてるよ。』
珈琲を一口飲んだ浩介は
「あ…」
と、声を出さずに唇だけで呟き
スッと華奢なメガネを外した。
きっと本当はまだ仕事中だったんだろう。
アタシはまた浩介に甘えてしまった事を後悔した。
『仕事忙しそうだね。』
「まぁな…で、お前は大丈夫なの?」
俺の話しはいいから、と。
『…ねぇ、浩介はどう思う?隆志と元カノ…』
煙草に火を点けた浩介は
アタシに背を向け
灰皿を片手に窓辺に立った。
「…もし隆志君が元カノを忘れられないんだとしても、それはそれとして、お前の事はちゃんと好きだと思うよ。」
そんなの納得いかない…
二人も好きな人が居るなんて
アタシには理解出来ない。
アタシはいつだって
隆志が全てだった。
アタシが隆志の全てでありたい なんて思わないけど
せめてアタシは隆志の"唯一"でありたかった。
ううん、そうだと思ってた。