【実話】アタシの値段~a period~




「俺さ…」



話し出す浩介の言葉に


ビクッと身体が拒絶反応を起こす。



何も聞きたくない


そんな思いが涙に変わるのを必死に堪えてうつむいていた。



「俺さ…、真面目な話しとか苦手だし

笑ってごまかしたりするのは

ほんと悪い癖なんだよな。」




うん、そうだね


だけどアタシは浩介のそんなところに救われてたよ。



どんな時だって


軽口をたたきながら アタシを笑わせてくれてたよね。



それが浩介なりの優しさだってことも


ちゃんと分かってるよ。



「でも、今日はごまかしナシで話すから
お前もちゃんと聞けよ。」




いつもよりワントーン低い声。



やだよ…



いつもみたいに冗談言って笑ってよ。




そしたらアタシも きっと笑って言うんだ。



頑張ってねって。



いつもみたいに憎まれ口の一つもはさんだりして。







うつむくままのアタシの前にあぐらで座り


覗き込むように目線を同じ高さにした浩介は



子供をあやす父親のように



堪えきれずに頬を流れてしまっていた涙を 親指で拭いた。





「いいか、ユキ
俺はお前が幸せならそれでいい。」





そんな、別れのあいさつとしか思えない言葉で

浩介は話し出した。



































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