【実話】アタシの値段~a period~






″ユキは俺がもらう″



そんな宣戦布告ともとれる
浩介の電話を切った後




遮断された思考回路で
ユキの泣き顔だけを思い浮かべていた。





ユキに真実を話そうとしたこと、

それが自分が楽になるための行動なら



ユキから離れること、

それだって同じだと



ユキを手放せないだけの俺は

自分に都合よく言い訳をした。





どうやったって

俺が ユキを

幸せにできる日なんてやっては来ないと

分かってはいたのに。





浩介と一緒に居たほうが

幸せなんだと

そんなこと

誰よりも、俺が一番よく分かっている。




だけど



ユキを失えば




俺にはもう








なにもない。










だから、あの夜


ユキのアパートの前で


部屋から出てきた浩介を見たときは





脱力感でいっぱいだった。






半ば、俺をけしかけるための台詞かもしれない、と

思っていたあの宣戦布告が



そうではないのだと


悟ったから。





駐輪所の壁にもたれた浩介の表情から



そう、


悟ったから。









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