【実話】アタシの値段~a period~
ユキと浩介の間に
何かが起こったことは明らかだった。
意を決して押した
ユキの部屋のインターフォン。
静かにドアを開けたユキが
ボーッとした目で俺を見る。
『あぁ、隆志‥』
力なく、微笑むユキに
違和感を覚える。
本当なら、あんな事があった後で
帰って、と
泣くのが普段のユキなのに。
「さっきの話し‥時計の‥ちゃんとしようと思っ‥」
『隆志‥』
俺の言葉を遮るように
何かを堪えるように
『その話しは明日じゃだめかな‥』
喉を詰まらせながらそう言ったユキは
額に手を当てながら
『ちょっと疲れちゃった』
と呟いた。
″何かあった?″浩介とのことが気になって
そう聞きそうになったけど
″何かした″のは俺か‥
そう思って聞けなかった。
黙って俯く俺の頬に触れたユキは
もう一度 微笑んで
『明日バイトが終わったら行くね。』
と、俺の返事を待たずに部屋のドアを閉めた。
‥様子がおかしい。
もうやめて、と
そんな思いが
ユキの微笑みから伝わった。
浩介が関係していることは
きっと間違いない。
さっき、俺の部屋を飛び出したユキとは
まるで 別人のようだった。
ユキの言葉の通り
疲れ果てていた。
俺はポケットから携帯を取り出し
浩介の名前を画面に表示させ
一つ溜め息を零す。
‥何をしてるんだろう。
この期に及んで
浩介に頼ろうとするなんて
どこまでも情けない自分に腹が立った。
明日話そう、と言った
ユキの言葉に縋るように
俺は家路についた。
明日がある。
今日で終わりじゃない。
そんなことに救われながら
明日が来るのを待った。