【実話】アタシの値段~a period~
眠れない朝を迎えた。
それなのに、午後になっても
少しも眠気に襲われることはなかった。
「お前、なんか‥大丈夫?」
喫煙所で顔をまじまじとのぞき込むトオルの
顔色悪くね?
そんな質問にもまともに答えられずに
ただ過ぎる時間だけを待った。
不安だったんだ。
昨日、少し様子のおかしかった彼女の
薄い微笑みが
頭から離れない。
浩介との間に何があったのか、
ユキの気持ちが
どんな風に揺れているのか
不安でしかたなかった。
そんな風に、不安が深くなるほど
同時に深くなる自己嫌悪。
浮き彫りになる、自分のずるさ。
明確になってゆく
ユキの存在の大切さ。
俺は もう とっくに
ユキ自身を想っていたんじゃないかと思う。
マヤの面影ではなくて
そう、
完全に
ユキをそのままで
愛していたんじゃないかと‥─