【実話】アタシの値段~a period~
焦燥感、罪悪感、
それが調和して、ふくれ上がる
自己嫌悪。
ユキの居ない、だだっ広い部屋の風景に
今にも押しつぶされそうになる。
あまり色のない、殺風景な部屋を好む自分のセンスを呪い殺したくなるほどだった。
このままだと
本当に 幻覚さえ見えてきそうだ。
もし、そうなら
もし、ほんとうに幻覚が見えたなら
俺は
誰の 幻を見るのだろう‥と
そんな最低なことさえ考えてしまうほど
鳴らない携帯に
追い詰められていた。
そういえば‥
いつか浩介に言われた言葉を思い返す。
「永遠に逢えない女を忘れるなんて
そもそも不可能なんだよ、
同時に愛してるって記憶も、時間も
現在形で永遠に止まるから。」
薄くジャズが流れるバーで、あの日
煙草に火をつけた後
浩介は更に続けた。
「だから、忘れろとは言わない。
マヤちゃんはマヤちゃんとして、
ユキはユキとして、
切り離して愛せるかどうかだと思うんだよね。」
ユキがそれを受け入れられるかどうかは別として、
そんなニュアンスな事を付け足して‥。
「もし、切り離して愛せたって、
それはズルくないか‥?」
そう言った俺に
「何をいまさら。」
と、浩介は肩を揺らして笑った
きっと怒り混じりに。