【実話】アタシの値段~a period~
『やっぱりこれが、いちばん好き。』
嬉しそうにそう言って
カルボナーラを食べ終わり
食器をキッチンに運び終えたユキは
煙草に火をつけながら
煙の逃げ道をつくるように
少しだけ窓を開け
再びソファに戻ってきた。
不意に吹き込んだ夏の夜風に
ふわっと揺れたユキのやわらかい前髪。
見とれる俺の視線に気づき
なに?と目を細めた彼女。
吸い込まれる様に
そっと触れた頬。
「ちょっと痩せた?」
『その話し、今しなきゃいけない?』
俺の首に腕をまわしながら
耳元で囁くように、呟く声に誘われるように
「…今じゃなくてもいい。」
白い首筋に
唇を落とした。
するりと、背中に手をすべり込ませたら
夏なのに俺の手よりも冷たい肌。
揺れる瞳にキスをして
指で唇の輪郭を辿ると
その手を握って
自分の指に絡めたユキが
俺の唇に短いキスをして。
足りない、とキスをし返そうとする俺の唇を
するり、頭をひいて、よけた君は
クスクスと笑って
今度は深いキスが降ってきた。
本能に支配された頭で
ふと思い出す。
この腕に 初めて君を抱いた夜も
確かこんな風に。
君は何かを誤魔化すように。
いったい何だっけ…
あぁ…もう、なんだっていい。
彼女の乱れる呼吸に
それ以上の思考がストップし
以前より少し軽くなった身体を抱きかかえ
ベッドへ沈む。
速く、重く、動く心臓の音が
彼女のものか
俺のものか
分からなくなるほど
何度も何度も君を抱いた。
愛してる、そう囁くたびに
瞳を揺らす君が
いとおしくて。