【実話】アタシの値段~a period~
″ちょっと寄って欲しい場所があるの″
そこは、丁度
住んでいた街と
これから住む街の
境目にあった。
『ちょっとここで待ってて。』
もう時期に、辺りが夜に沈む頃。
「一緒に行こうか?もう暗くなるぞ。」
長い塀を挟んで
向こう側に墓地が見える。
何も言わず、少し首を振りながら
穏やかに笑ったユキは
塀の向こう側へと歩いて行った。
海の見えるこの丘に
ユキの最大の支えであり
そして、最大の傷であるだろう
彼女の親友が眠っている。
そう思うと、
不意に、とてつもなく
やりきれない思いが湧き上がる。
なぜだろう。
なぜユキなのだろう。
なぜ、ユキばかりが
こんなにいくつも
痛みを背負わなければならないのだろう。
神様は不公平だ、と
陳腐な言い訳としか思えなかったセリフが
今は、まるで自分の言葉のように思える。
その上、ユキは
こんなにも
他人に自分の痛みを背負わせることを
ひどく、嫌っているというのに。