【実話】アタシの値段~a period~
ユキが車を降りて20分が経った。
……遅い。
車を降りて、様子を見に行こうかと思ったが
それはとても、イケナイ事のような気がしてやめた。
外はすっかり真っ暗で。
数本の街灯と
数メートル先に見える
自動販売機、
灯りといえばそれくらいしかない。
車も通らないような、
とても都会的とは言えない風景。
しかも季節は夏。
なんだか、見てはいけないものでも
見てしまいそうで
ぶるっと身体が震えた。
……ガチャ
「わっ!!!」
『なによ、人を化け物みたいに。』
してやったり、とでも言いたそうに
笑いながら帰ってきたユキに
「お前、わざと足音消しただろ?」
と目を細めると
『アンタって何気にビビりだよね。』
と言って、ユキが笑った。
だから、俺も笑った。
ユキが、楽しそうに笑うから。
嬉しくて、笑った。