【実話】アタシの値段~a period~
「いい加減、話せよ。」
お前と隆志くんに何があったのか。
『なにをー?』
こちらは見ずに。
「まぁ、話したくなったら‥
ってことでもいいけどな。」
月の光を眼にためながら
ふふっと笑ったユキが
少し泣きそうに見えた気がして
俺はそっと視線をまた空に向けた。
『アンタって、ほんと、お父さんみたいだよね。』
「‥‥‥‥‥‥。」
わざとらしく不服そうな表情を見せると、
『なによ‥‥じゃあ、お兄ちゃん?』
「‥‥‥‥‥‥妹ってキャラかよ。」
『確かに‥。』
なぜかおかしなツボにはまった俺たちの
あはは、とうるさい笑い声が
湿った夏の空気にはよく栄えていた。
二人で、ひとしきり笑ったあと
笑い疲れて、息を整えたユキが
『ずっと守ってくれてありがとね、お兄ちゃん。』
きっと、そう
いくつかの意味を込めて微笑んだ。
俺は、兄的な存在であって
男としては見れない。
遠まわしに
そう言われているのだと思った。
が、なぜか
悪い気がしなかったのは
ユキのその屈託のない笑顔が
とても穏やかだったからかもしれない。
そして、もう一つ引っかかったのが‥
「‥‥守ってくれて、って?」
やっぱり───
知っている──‥‥?