【実話】アタシの値段~a period~
パソコンの通信トラブルのせいで
会社を出たころには
約束の7時をとっくに過ぎていた。
ユキの携帯に 一度電話をかけたが
やはり電源は入っていなかった。
込み合った車道にイラつきながらも
急いでマンションへと車を走らせた。
駐車場に車を停めた頃には
夜の8時を過ぎていた。
一人、知らない土地で
空っぽに近いあの部屋で過ごすユキを思うと
なんだかとてつもなく、切ない気持ちになる。
‥こんなことじゃ、先が思いやられる。
ユキのこととなると
やたらに過保護な自分に対して
やれやれ、と
一つため息をこぼしながら
マンションのエレベーターに乗ろうとした時だった。
エントランスに、携帯の呼び出し音がエコーをかけたように響いた。
「‥ったく、誰だよ。」
舌打ちを一つして
携帯を取り出すと
そこには、
まぁ、想定内の表示。
エレベーターの扉は
俺を乗せることなく閉まってしまった。
─────着信中─────
隆志くん