【実話】アタシの値段~a period~






「もしもーし?」





「おい!今ユキと一緒か!?」




挨拶もなしに、息を切らせながら
喰ってかかる隆志くんは


「なに?ユキの部屋行ったの?」


おそらく、ユキの部屋が空っぽなことに気づいたばかりの様子だった。



「あぁ、今部屋の前だけど、空室の施錠かかってるし、電話もつながらない。


アンタと居るとしか思えないんだけど。」





「察しがいいね、隆志くん。」




少しふざけた話し方は



「どこ連れてったんだよ!」




こいつを煽るためにわざと使った。




「連れてったって‥やめろよ、人聞きの悪い。」




「‥‥やっぱりお前のとこに居るんだな。」





「居たとして。お前にはもう、関係ない。」





そのつもりもなく、
安易に、気軽に、
ユキを追い詰めたとは言わせない。




「関係ないって、どういう意味だよ!」






「そのままの意味だけど。お前バカなの?

ユキにどこまで話したんだよ。」




「はぁ?」




「あぁ?」





これが電話でよかった、と後になって思う。



もしも、目の前にコイツがいたとしたら



掴みかかっていたに違いない。


きっと、それは向こうも同じだっただろうけど。






「話したって、なにを?」




「だから‥マヤちゃんのことだよ。」






「‥‥ちょ、ちょっと待て、ユキがそう言ったのか?」





「いや、詳しいことは聞いてないけど、それらしいことは言って‥」




「俺話してないぞ‥。」




俺の声に重なるように呟いた隆志くんは




「もしかして‥」




何かを思い出したように。




「おい、なんだよ。」




「悪い、またかける‥」



力なく言うと



「あ、おい、ちょっと‥」



俺の言葉も無視して、一方的に電話が切れた。







シンとしたフロア。


ツーッツーッと、しばらく続く機械音を耳に受けながら


話しが見えなくて呆然とした。







じゃあ、ユキに一体


何が起こったというのだ‥‥?








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