【実話】アタシの値段~a period~





玄関のドアを開けると


室内は真っ暗だった。


「ユキー?悪い、遅くなった。」



照明のスイッチを押し、

部屋が明るくなると同時に


俺は、ヒヤリとした。




キッチンの床に

今朝、俺が出していったカップが

割れて、散らばっている。



その隣には、

封を切った珈琲が

中身を散らして転がっていた。





「おい!


ユキ!?」




真っ暗なユキのベッドルームにも


ユキは居なかった。




その時



『浩介ー?』



背後から聞こえた声に
安心感から、目眩を起こしそうになった。




リビングのテーブルとソファの隙間で


眠たそうに
のそのそと状態を起こすユキ。



「お前、どこで寝てんだよ。」




『ん‥よく覚えてないや。』




そう言いながら、そのままソファに腰掛けた。





「つかお前、暴れんなよ。」



キッチンの床を指さすと


『‥これ、アタシがやったの?』



と、不思議そうな顔をした。



「覚えてねぇのか?」




うーん、と唸りながら



『起きて、シャワー浴びて、コーヒー飲もうと思ってー‥んー?その後のこと覚えてない。』




「寝ぼけてたんだろ。」




そう言いながら、

冷蔵庫を開ける。



「食わなかったのか?」



今朝、俺が入れていった食料が
全てそのまま残っている。




『あー、明日食べるよ。ごめんね。』



割れたカップの破片を拾いながら

申し訳なさそうな顔をした。













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