【実話】アタシの値段~a period~
あの赤色の時計が
俺の手元に戻ったのは
その次の日だった。
俺が休日なのを知っているかのように
昼間に鳴ったインターフォン。
‥もしかしたら。
駆け寄り、勢いよく開けた玄関のドア。
俺の身勝手な期待は
驚いて荷物を落としそうになる
宅配便業者の姿とともに
打ち砕かれた。
‥‥ユキなわけ‥ないか。
サインをして
荷物を受け取り
貼りつけてある伝票を凝視する。
差出人の名前が
!?
──────藤原 有希
ユキだった。
差出人の住所は
二日前まで ユキが居たあの部屋。
あの部屋を出る前に出したのだろうか。
急いで荷物を解くと
そこには
あの赤色の時計が。
あの日、飛び散ったはずの
部品まで。
ほんの少しだけ、歪んでいるけど
ほとんどわからないほど元通りに。
裏返すと
マヤの字もそのままだった。
滲んで、読みとれなくはなっていても
忘れるはずもない。
″あいらぶゆー
MAYA″
‥マヤごめんな。
「ユキのこと、好きになっちまった─‥」
そのうえ傷つけた。