【実話】アタシの値段~a period~
ゆらゆら揺れるオレンジ色。
その向こう側で微笑む隆志。
アタシは
ドアの取っ手を握り締めたまま
状況が解らずに立っていた。
「座ったら?」
ポンと、自分が座る真隣りを
撫でる隆志が手招きをして
アタシは
叩かれたレザーの弾く音に導かれるように
隆志の隣りに辿り着いた。
「音痴だから、ハッピーバースデーは歌ってやんねぇぞ。」
……これは夢?
自分のために用意されたバースデーケーキ
18年間生きて、アタシには初めてのことだった。
「ほら、消して」
そう言いながら、ポンと背中に触れられた手。
生まれてから今日まで背負ってきたものが
スッと、少しだけ降りて行くのを感じた。
隆志のその手が
降ろしてくれた気がした。