風のようなキミ
そんなことに気づきもしない君は、
「あっ俺はね〜松田唯(マツダユイ)って言うんだあ。」
にこっ、と笑いながらそう続けた。
それにたいして、
「唯くんって言うんだ。私は、宮田杏(ミヤタアン)だよ。杏って呼んで!」
「うん。そっちのおとなしい子は?なんて言うの?」と優しい声で訪ねてきた。
「えっおとなしいって美月のこと?ないない。この子は綾瀬美月(アヤセミツキ)だよ〜。おとなしく見えるのは見た目だけ。」
そう、いらないことまでつけて、杏が答えた。
「ちょっ、見た目だけってそんな…「あっ喋った。怒った顔もかわいいね。」
私が言い返そうと思ったら、唯がそんな事を言いやがった。
思わず顔が赤くなってしまい、
「あ〜今度は赤くなった。」
杏と一緒になってからかう唯に私は
「――もう!別に赤くなってないしっ。みんなにそういうこと言ってんでしょ?」
と、強気に返したが、
「うん。だって女の子はどんな顔でも、かわいいもん。」
…そう当たり前と言わんばかりの顔に、ムキになった私が馬鹿らしくなった。