君が君を好きになって。2

「綿貫たち!」

キュ。
蛇口からとめどなく流れる水を止め、菜束は蛍に笑い掛けた。

「最近なっか良く笑う」

「そう?」

「可愛い!じゃあね」

蛍も消えたトイレで菜束はそっと口許を押さえた。

本当だ。

「笑ってる」

菜束は目を伏せると、トイレの出口に手を掛ける。

「よしっ」


一つ頷いて、歩き出した。







彼らは、いつも第二音楽室で昼を過ごすらしい。

誘われた菜束は今、その扉の前に立っている。




「あ、小玲?」

声を掛けられて、振り向いた菜束の目に映ったのは、白羽だった。

「芹沢君が体育着」

「そうそう、次体育。」

「…あ、眼鏡は!?」


「遅っ」

何かが足りないと思ったら。

「もう眼鏡が芹沢君なのかもね」

「俺本体は付属品みたいな」

「うん…あはは」

抑え切れない思いが溢れて、菜束は壁にもたれて笑い出した。

「眼鏡ネタがツボなんだ?小玲は」

「だって芹沢君面白い」

「小玲だって十分…」

「面白い?もしくは変、とか」

「変かな」

「あはは」


< 2 / 59 >

この作品をシェア

pagetop