君が君を好きになって。2
「綿貫たち!」
キュ。
蛇口からとめどなく流れる水を止め、菜束は蛍に笑い掛けた。
「最近なっか良く笑う」
「そう?」
「可愛い!じゃあね」
蛍も消えたトイレで菜束はそっと口許を押さえた。
本当だ。
「笑ってる」
菜束は目を伏せると、トイレの出口に手を掛ける。
「よしっ」
一つ頷いて、歩き出した。
彼らは、いつも第二音楽室で昼を過ごすらしい。
誘われた菜束は今、その扉の前に立っている。
「あ、小玲?」
声を掛けられて、振り向いた菜束の目に映ったのは、白羽だった。
「芹沢君が体育着」
「そうそう、次体育。」
「…あ、眼鏡は!?」
「遅っ」
何かが足りないと思ったら。
「もう眼鏡が芹沢君なのかもね」
「俺本体は付属品みたいな」
「うん…あはは」
抑え切れない思いが溢れて、菜束は壁にもたれて笑い出した。
「眼鏡ネタがツボなんだ?小玲は」
「だって芹沢君面白い」
「小玲だって十分…」
「面白い?もしくは変、とか」
「変かな」
「あはは」