君が君を好きになって。2
職員室前。
「あ!綿貫じゃん」
「莉桜」
「なに何?説教?」
莉桜は悪戯を考える子供みたいな顔で碧に問いかけた。
それほど、碧が職員室に居るのは珍しいことなのだ。
碧は首を振る。
「何でそうなるんだよ」
困ったように笑って首を傾げる碧に莉桜も首を傾げた。
「じゃあ何で?」
迷うみたいな間。
視線をうつらせてから、
「内緒」
と笑った。
第二音楽室へ移動しようと歩いている時、ふと莉桜の足が止まる。
「あ」
「え?」
「ちょー購買行って来る!先行っといて!」
駆け出した莉桜に手を振って、碧も莉桜と逆方向に歩き出した。
──来てるかな
来ていないかも知れない。
音楽室の前で少し窓を覗く。
保険だ、保険。
「綿貫?」
「────え」
碧が風みたいに振り向いた。
目線の先に、菜束。
嘘みたいな瞬間だったと菜束は思う。