君が君を好きになって。2
「…事情ってこれだった?」
「───…」
碧が小さく息を吐く。
「怒るよ?」
その口調は、でも優しくて。
菜束の目から涙がこぼれ落ちる。
「……何で嫌わないの」
「誰を。小玲を?」
「だってこんな、いきなり無視されて、…何も言わなくて」
「うん、だから今小玲が話してくれなきゃ怒る」
もう一粒、菜束が涙をこぼした。
「…っ」
その時。
ドサッ。
「!え、は!?」
二人の間に、重い音を立てて鞄が落ちる。
何故に鞄?
「なーに女の子泣かしてんだ、碧」
少し向こう、鞄を投げた張本人が、手ぶらで笑っていた。