君が君を好きになって。2
「ど、どうしたの?」
「菜束、綿貫何て言ってた?『早退するから…』?」
菜束が考え込んで周りは黙り込む。
「『お昼ご飯食べにおいで』って…──あ、えっ、莉桜ちゃんっ」
「ほい?どうかなさいました小玲さん?」
菜束が立ち上がったことに遙が驚いた顔をして、莉桜は言葉のまま返事をした。
「それって、私、綿貫に気を使わせて、…私のせいで綿貫…一人なのかな?」
「いや、菜束落ち着きなって。綿貫は別に私ら居なくても相手一杯居るし、一人なんて訳…」
「違うの、私のせいで綿貫に嘘吐かせちゃったんだよ!」
莉桜が呆れたように笑って白羽に視線をやった。白羽は知らぬふりをしていたけれど。
「嘘って…綿貫だって人間、あ、菜束!」
ガタ、と忙しい音がした頃には菜束は音楽室の扉に手をかけていた。
「ごめんなさい、私、ちゃんと綿貫と話してくる!」
扉を閉めたとき、心なしか「頑張れ」という声が聞こえたような気がした。
菜束はひとつ頷くと取り敢えず碧のクラス…四組へと走って行った。