夜の女に恋をした
部屋に入るとその子はヤカンに火をかけ、お茶を入れてくれた。


自分は自分専用なんだろう、白いアイスクリームの柄のついたマグカップにコーヒーを入れていた。

そしてその横には黒いアイスクリームの柄のマグカップ。

真斗のものなんだろうな。


でも部屋を見渡してもあまり変わってない。

同棲はしてないんだろうな。

私物があんまりないみたいだし。


そんなことを考えるとコツンと目の前にコーヒーが運ばれてきた。



「あなた、悠嘉さんでしょ?」


いきなり呼ばれたことに驚いた。


「ええ。わたしの事聞いていたの??」


「慎吾くんから。最低な女がいたって聞いた。」



そう思われていたことにショックを受けた。

そりゃそうよね。

いきなり家に居座った上、目の前から自分の都合でいきなり消えて。

最低じゃない。



「そう・・・。」


「何しに来たんですか??あの・・わたし真斗くんと付き合ってるんです。彼女なんです。ハッキリ言って迷惑です!!」


強い口調でキッとわたしを睨みながら彼女は言った。



そっか。

彼女できたんだ。

帰ろう。

わたしのいる場所はここにはない。


「そうね。帰るわ。」


そう言ってわたしは口もつけてないコーヒーを残して立ち上がった。


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