地下鉄
「まあ杞憂で済めば良いんですけどね」

語っていた老女は、ふと周囲をキョロキョロ見回した。

「あら、いやだ。そろそろ時間だわ」

「そうですか。それでは最後の良き旅を」

「ええ、ありがとう」

老女はにっこり微笑んで、歩いて行った。

老女は自分がどこへ行けば良いのか、分かっていた。

迷うことなき足取りが、それを物語っている。



―が、老女は珍しい方だった。

普通なら、エライモノになっていることが多い。

まあそれは彼等が対応することになっているから良いのだが、わたしの場合、『迷子』の対処が難しい。
< 18 / 31 >

この作品をシェア

pagetop