地下鉄

迷子

ふと、感覚的に何かが引っかかった。

…この感じは、迷子がいる。

しかもかなり近くに。

わたしは迷子の元へ、足を向けた。

歩いて行くと、目の前に周囲をキョロキョロしている男性を見つけた。

「こんばんわ」

声をかけると、男性はぎょっとして振り返った。

「どっどこの地下鉄だっ! ここは!」

必要以上に声を張り上げ、男性は言った。

黒い服装に身を包み、しかし男性の体からは血の匂いが漂ってくる。

普通の人間では分からないほど、微かだが…。
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