地下鉄
「…だ」

…ああ、やっぱり。

「イヤだイヤだっ! こんな所へ来るはずではなかった! 私はずっとあの場所にっ…!」

まあこういう迷子はたま~に来る。

一つの場所に留まっていた昔の人。

けれど何らかの力が働いて、追い出されたのだろう。

追い出されれば、ここへ来るのは必須。

「そうはおっしゃられてもね。きっと戻れませんよ?
それにここからも出られません。あなたの行く所は、一つですから」

「…っ! 言うなっ! 小娘!」

「小娘…て言われるほど、わたし、可愛くないんですよ」

そりゃ彼からすれば、小娘に見えるだろう。

けど…この身に流れる血は彼より古く、そして重い。
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