桜の下で ~幕末純愛~
桜夜の誕生日が間近に迫った11月。

沖田は一人で町に出ていた。

―今回は何を贈りますかね―

数軒の店を回って悩む。

「よぉ、総司」

「あれぇ、こんな所で何してんだ?」

「今日は団子屋じゃねぇのか?」

そこに知った声がする。

―新八さん、左之さん、平助…何故会いたくないときに限って…―

「貴殿方は昼間っからお遊びですか?」

ため息混じりに言葉を返す。

「総司は?ここって…」

藤堂が沖田の出てきた店を見て不思議そうに言う。

「おっ、桜夜ちゃんにか?」

永倉はニヤニヤしている。

―だから会いたくなかったのです―

「ええ。もうじき桜夜の生まれた日ですからね」

三人は揃って首をかしげる。

「未来ではケーキを買って…あ、甘味の様なものです。その方に何か贈るのですよ。まぁ、宴会をする感じですかね」

―何で寄りによってこの人達に説明しなければいけないのです―

「ほぉぉ」

三人は感心していた。そこに藤堂が

「あっ、じゃあさ、俺等も何かあげようぜ」

と提案。他の二人も賛同しそのまま町に消えていった。

―桜夜の誕生日がいつかも聞かずに…まさか今日渡すんじゃないでしょうね―

沖田は再度ため息をつき、再びプレゼントを探しに向かう。

―意外と決まらないですね。着物?桜夜の事だから高価だと言い出しそうですね―

―あの子はお古ばかりで欲しい物の一つも言わない―

更に数件回った先でやっと納得のいく物が見つかった。

ほのかに桜の香りがする匂袋。

―これなら喜んでもらえるでしょう―

沖田は匂袋を買うと屯所へ引き返した。

沖田が戻ると永倉、原田、藤堂が桜夜を探していた。

―やっぱり―

沖田は三人を捕まえ、今日渡す日じゃない事を告げる。

三人が手にしていたのは金平糖。

―金平糖じゃ只の手土産になるじゃないですか―

「じゃあ、いつなんだ?」

原田が聞く。

「教えませんよ。邪魔しないで下さい」

そう言って沖田は部屋に戻った。

残された三人は包みに入った金平糖を見て困っていた。
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