桜の下で ~幕末純愛~
そして桜夜の誕生日当日。

桜夜が庭掃除をしている姿を沖田は眺めていた。

「総司、何?」

「いえ。別に」

別にじゃないよ。何で見てんの?

「今日は非番?だったらお団子でも食べに行ったら?」

―この様子じゃ誕生日を忘れてますね―

「はいはい。桜夜が酷いので団子でも食べに行きますよ」

そう言って沖田は出ていった。

ひどいって…。見られてたらやりずらいってば。

夕餉も済み、各々がくつろいでいる頃。

「桜夜、ちょっと出ませんか?」

沖田が誘う。

「出る?どこに?」

「まぁ、いいですから」

沖田は桜夜を連れて門まで来た。

「そっ、外?夜に外はマズイよ」

「平気ですよ。すぐ裏手ですし。大体誰が一緒だと思ってるのです?」

あ、そうだ。総司は新撰組の沖田総司なんだ…。

「沖田総司、だな」

「「土方さん」」

声の主、土方が腕組みをして立っていた。

「総司はともかく、稲葉を連れては感心しねぇな。大体同室のくせしてわざわざ出るこたぁねぇだろ」

―何故今日に限って現れるのでしょう―

ひじぃ…言ってる事は正しい気がするけど…哲並みのお邪魔虫っ!

「文句は受付けねぇ。ともかく外出は許可できねぇな。副長命令だ」

桜夜と総司は揃って頬を膨らませた。

「こんな時に副長を使うなんて、汚いですよ」

そーだ、そーだ。

「文句は受付けねぇと言っただろ。戻れ」

「…仕方ないですね。分かりましたよ」

沖田は桜夜を連れて渋々戻る。

「ねぇ、いきなり外になんてどうしたの?」

部屋へ向かいながら聞く。

「本当に忘れてるんですね。今日は何日ですか?」

今日?何日?………あっ、誕生日だ。

「あ…誕生日。ホントに忘れてた」

未来では何買ってもらおうかって考えてて忘れた事なんてなかったのに。

「それで外に?だって夜なんて何もないじゃん」

「桜夜に見せたいものがあったのですよ。でも、土方さんの言うことも否定出来ませんからね。諦めました」

気持ちだけで嬉しいよ。

「じゃ、また来年チャレンジだね」

「………」

―来年はあるか分からないのに?―

あ…来年って…私はどうなってるか分かんないんだ…。
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