桜の下で ~幕末純愛~
何となく気まずくなってしまった二人。

このままじゃヤだな…。そうだ!

「ね、じゃあ、ちょっと台所に付き合って」

桜夜がきりだす。

「台所?いいですけど」

暗くなった台所に灯りを点し、桜夜は何かを作り始めた。

自信はないけど、ここにあるもので作れるだけやってみよう。

桜夜はケーキに似た物を作った。

…ケーキっていうよりホットケーキもどきみたい。

黙って見ていた沖田が感心する。

「凄いじゃないですか」

「生クリームがないのが悔しいね」

二人は笑いあった。

「何だ?こんな時間にいい匂いがするじゃねぇか」

そこに現れたのは永倉だった。

―土方さんといい、新八さんといい…何なのですかっ―

桜夜は思わず声をあげて笑いだした。

「新八さんってば、食べ物の匂いがすると必ず現れるんだから」

永倉は少し笑いながら頭を掻く。

「それにしても、何を作ってたんだ?」

「ケーキらしき物です。全く別物になっちゃったけど」

「けぇき?おっ、ってぇ事は今日なんだな」

永倉はニヤッと笑った。

「え?永倉さんもしかして私の誕生日知ってるんですか?」

「ああ、総司から聞いた。じゃ、宴会しなきゃなんねぇな」

だんだん永倉の目が輝いてくる。

「は?え、宴会?」

そこに諦めた沖田が口を挟む。

「この間、誕生日のお祝いの事を宴会のようなものだと言ったんですよ」

パーティ = 宴会?あってる様な違う様な…。

「よーしっ、呑むぞ。総司の部屋でいいよな。折角だ、左之と平助も連れてきてやるよ」

そう言うと永倉は走って消えていった。

「「…………」」

しばらく無言でお互いの顔を見ていたが、どちらともなく笑いだす。

「こういう誕生日もいいんじゃない?」

「そうですね」

―負けましたよ。まぁ、桜夜が嬉しそうだからいいでしょう―

ホットケーキもどきを持って二人は部屋に戻った。

部屋に着くと既に三人は揃っていた。

「おぅ、おせぇよ」

原田が手をヒラヒラ振っていた。

「…何故勝手に入っているのです?」

「まぁ、まぁ、こまけぇ事は気にしねぇで呑もうぜ」

永倉が豪快に笑っている。

「つめてぇよな、早く言ってくれよ」

藤堂が少し膨れた。
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