桜の下で ~幕末純愛~
パーティと銘打った単なる呑みは遅くまで続いた。

途中「うるせぇ」と怒鳴り込んで来た土方と「何の騒ぎだ?」と様子を見に来た近藤をも巻き込んだ。

本来の目的を1ミリも覚えてないよね、この人達。

結局、永倉と藤堂が眠りだし、お開きとなる。

皆、部屋へ戻る間際に原田が何かを桜夜に手渡した。

「こないだ買ったんだ。じゃあな。あ、総司、邪魔したな」

―分かっているなら初めから遠慮してほしかったですね―

桜夜は原田から貰った包みを見てニコニコしている。

金平糖だ。金平糖がこんなに嬉しいのって初めてかも。

しかし、この部屋…きったなっ!

余韻どころじゃないね…。

桜夜は片付け始める。沖田も手伝いだした。

「楽しかった」

「そうですね。途中から目的が変わりましたけど」

一通り片し終えると沖田が桜夜を縁側へ連れ出した。

な…何となく緊張する。

「ねぇ、不思議に思ったんだけど…。未来での一年がこっちは一ヶ月だったでしょ?って事は私の歳は未来に居た時と変わらないの?」

「そう言えばそうですね…と言う事は私もですかね」

「「………」」

「ぷっ。何か得した気分だね」

桜夜が吹き出した。

「桜夜」

ふいに呼ばれドキッとする。

「はい。おめでとう」

ポンと置かれた手の上には香りのするとても小さな巾着。

「これ…は?」

「匂袋ですよ。そこに入れておいて下さい」

沖田が桜夜の胸元を指差す。

「ありがとう。ホントに嬉しい」

桜夜は匂袋をギュッと握りしめた。

「桜夜は元の時代に帰りたいですか?」

突然聞かれ、心臓が跳ね上がった。

「………正直、分かんない」

お母さんのには会いたいけど、ここでの生活も手放せなくなってる…。

総司と生きていきたいって言ったら総司はどうする?

未来へ帰らなきゃいけないって反対する?

「でも、今は分からなくてもいい気がする」

桜夜はそう言って立ち上がると

「部屋に戻ろ?冷えてきちゃった」

と小さく笑った。

―未来へ帰したくないと言ったら桜夜は困りますか?―

沖田は出かかった言葉を飲み込んで部屋へ戻った。
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