桜の下で ~幕末純愛~
寒さが増した12月。

「ジングルベ~ル ジングルベ~ル すっずが~なるぅ~」

桜夜は歌いながら洗濯をしていた。

う゛~、冷たいよ。手の感覚がなくなってきた。

しばらくすると後ろから沖田が現れる。

「もうすぐクリスマスですね」

「総司!?」

いつの間に…何で毎回いきなり後ろにいんの?

そう言えばひじぃも気配ない…忍者?

「ツリーやイルミネーションがないのは寂しいですか?」

桜夜は悴んだ手に息をかけながら「ううん」と答え

「今はイルミネーションとかツリーとかどうでもいいや。とにかく洗濯機がほしいっ」

そう言って洗い途中の洗濯物をヒラヒラさせて沖田に見せた。

「水が冷たいですよね。手伝いましょう」

沖田が隣に座り洗濯物を手にする。

「いっ、いいよっ。こういうの男の人はしないもんでしょ?」

桜夜は沖田の手から洗濯物を奪った。

「そんな事を気にするんですか?そんなに手を赤くして?」

沖田はクスッと笑う。

「とにかくいいのっ。もうすぐ終わるし」

桜夜は洗濯を続けた。

「変なところが頑固なんですから」

沖田は立ち上がり

「では、この後、一緒に出掛けましょうね」

と桜夜の頭にポンと手を置いて戻っていった。

手伝わない代わりに出掛けろ?意味分かんない。ま、総司と一緒に行けるならいいか。

桜夜は急いで洗濯を終わらせた。

屯所内を沖田を探しながら歩き回る。

いないじゃん。

そこに永倉とバッタリ会った。

「あ、新八さん。総司見ませんでしたか?」

「おぉ、総司ならさっき稽古を怠け過ぎだって道場に連れてかれてたぜ」

…捕獲されたんだ。しょうがないか。

「どうした?何かあったか?」

「いえ。出掛けようって言われてたんですけど、仕方ないですね」

桜夜が戻ろうとした時。

「じゃ、暇なんだな。だったらたまには俺に付き合わねぇか?」

永倉が桜夜を誘った。

「え?そりゃ暇ですけど、いいんですか?」

「あぁ、勿論だよ。一人じゃ入りずれぇんだ」

まさか島原とか言い出さないよね…。島原なら私を連れてく訳ないか。

桜夜と永倉は外に出た。

着いた先は甘味処。

永倉さんが甘味?

桜夜は首をかしげた。
< 104 / 234 >

この作品をシェア

pagetop