桜の下で ~幕末純愛~
「病に侵されていようがいまいが、この時代だ。誰だろうが明日の身の保証はねぇよ」

土方はゆっくりと沖田を座らせる。

「お前より稲葉の方がよっぽど覚悟ができてるぞ」

「桜夜が?」

「だいぶ前だが、あいつは俺に言ったんだ。お前と生きて行きてえってな。それが明日で終わりだろうが、50年先だろうがな」

―私と生きて行きたい?―

「真っ直ぐ、強ぇ眼をしてな」

「桜夜は私の病を知っている筈でしょう?」

―なのに、何故―

「病だからと鞍替えする女か?あいつは。だったら始めからお前に着いてこんな時代に来やしねぇだろ」

―あぁ…桜夜―

「時間じゃねぇだろ。ここの問題だ」

土方は沖田の胸を軽く叩いた。

「どうすんだ?それでも諦めるってなら本当に俺が貰うぜ」

「………」

「今はまだ強がってるがな。あんな所で寝起きしてちゃ時期に心も弱くなってくるだろうよ。まぁ、堕ちるのも時間の問題だ」

「あんな所?何処か部屋じゃ ゴホッ ないのですか?」

「さあな。あいつが俺の手で女になってく様を指加えて見てるこったな」

―土方さんの手で?桜夜に土方さんが触れる?―

「黙ってるって事は、いいんだな?」

「…いえ。お断りします。桜夜は何処に ゴホ 居るんですかっ?」

「フッ、教えてやる程優しかねぇよ。知りたきゃ、てめぇで探すんだな」

土方は酷く優しい眼をして答えた。

土方が言うより早く、沖田は部屋を飛び出していた。

―桜夜、貴女に愛してると伝えてもいいですか?―

その頃、桜夜は眠れずに布団から出て月を眺めていた。

ひじぃ…ゆっくり考えろ…か…。

いくら考えたってムリだよ…やっぱりひじぃじゃないみたい。

あんなに優しくしてくれんのに、何で違うんだろう。

ひじぃに何て言ったらいいのかな…。

言いづらいなぁ。

総司、寝たかな?寝れてんのかな…。

逢いたいよ。声が聞きたい。

「桜夜」

はぁ、とうとう幻聴まで聞こえてきたよ。末期だな。

「ゴホッ 桜夜っ」

ゴホ?咳?まさか…

振り向こうとすると背中に誰かの温もりを感じた。

本物?

「そう…じ…?」
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