桜の下で ~幕末純愛~
沖田の腕の中で目を閉じながら考える。

いいんだよね…もう言ってもいいよね…好きって。

桜夜は埋めていた顔を上げ、沖田を見つめた。

「総司。あ、あのね…私…」

言いかけた言葉は沖田の人差し指に止められる。

唇に触れた指。そこだけが熱く感じた。

「先に言わないで下さい」

クスリと笑う沖田の顔が妖艶で思わず見とれてしまう。

「愛してる」

沖田はそう言うとゆっくり桜夜に口づけた。

気が遠くなる程の甘い口づけ。

沖田の唇が離れた時には桜夜の顔は真っ赤だった。

そんな桜夜を見た沖田が笑う。

「桜夜 ゴホッ 茹で蛸ですよ」

「だっ、だって急にっ、そ、総司が…キ…」

桜夜は更に顔を赤くする。

「桜夜は本当に可愛いですね」

クスクス笑う沖田に恥ずかしくなって桜夜は沖田の胸に顔を埋めた。

沖田は桜夜の髪を撫でながら少し小さな声で言う。

「桜夜、私の病を ゴホ、ゴホッ 知っているでしょう?それでもいいのですか? ゴホ 私は桜夜を置いて先に…」

桜夜は沖田の真似をしてその唇に人差し指を立てた。

「分かってる。それも全部が総司だから。それに総司、実は私より150才以上年上だよ。私より長生きしたら人間じゃないし」

思わず二人して声を上げて笑った。

「私は変質者の後は化け物扱いですか?でも、それもいいかもしれませんね。 ゴホッ 桜夜を置いて逝かずにすむ…」

「変質者でも化け物でも…病気でもいいよ。だけど約束して?最期まで傍に居させて」

沖田は優しく笑う。

「誓います」

そして二度目の口づけを落とした。

その日は明け方まで話し続けた。
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