桜の下で ~幕末純愛~
翌朝、ナミは困っていた。

何時まで経っても桜夜は来ないし、誰のか分からないが、何故か布団が置いてある。

そこに土方が現れた。

「あぁ、土方さん。お桜夜ちゃん知らないですかね?それと、あれは何故此処に?」

土方はナミの指差す方を見ると、桜夜の布団が敷きっぱなしだった。

―あの餓鬼共…後始末くれぇしとけよ―

「稲葉は見てねぇが…布団は持って行きますよ」

土方は渋々布団を抱え、沖田の部屋を訪れる。


「おい。てめぇら、いい加減に起きろ」

一向に返事がない。

―あいつら…まぁ、昨日の今日だしな。お盛んだったか―

仕方なく襖を開ける。

沖田と桜夜が寄り添いながら眠っている姿が目に写る。

桜夜に至っては“幸せ”などという言葉に収まりきらない程、幸せそうな顔をしていた。

―あまり見てぇもんじゃなかったな―

土方が立ち尽くしていると沖田と目が合った。

「邪魔しないで下さいよ」

その声に桜夜も目を覚ます。

あ…ひじぃ…

「お盛んなのはいいがな、後始末くれぇしてからおっ始めろ」

桜夜の布団を部屋に放り込むと部屋を後にした。

「おはよう。土方さんに邪魔されちゃいましたね」

沖田がクスリと笑う。

桜夜は沖田と共に居る幸せと、土方に見られた罪悪感で何とも言えない表情だった。

そんな顔に気付いた沖田は桜夜の頭をクシャっとして布団から出る。

「さて、桜夜との時間を邪魔されたので ゴホ、ゴホッ 土方さんを斬ってきますね」

ニヤッと笑うと沖田は土方を追って出た。

斬るって…刀も持たずに?

桜夜はクスッと笑うと自分も仕事に向かった。

「土方さん」

沖田が後ろから声をかける。

「何だ」

「有難う御座いました」

沖田が頭を下げた。

「手間の掛かる餓鬼共が。覚悟を決めたか?」

「ええ ゴホッ もう二度と手放しません」

土方はフッと笑うと

「そうか」

と言い、歩き出した。

―今生では譲れません―

沖田はその後ろ姿に呟くともう一度頭を下げた。
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