桜の下で ~幕末純愛~
さっ、寒いっ!

桜夜は洗濯の山に格闘中だった。

「まだ意地を張るつもりですか?」

沖田が現れる。まだ時折咳をしながらも笑っていた。

「手伝っちゃダメ。風邪ひいたら大変だよ」

桜夜は手を真っ赤にさせ、洗濯を続けながら言う。

沖田も体の事は解っているのでそれ以上は言わない。

「総司、今日は?」

「ゴホ 夜の巡察だけですよ。寂しい?ならこの後に…」

沖田の言葉を桜夜は首を振って遮る。

「平気だしっ。それにこの後は山南さんとお茶すんだもん」

相変わらず籠りきった山南が気になって仕方なかった。

その時が近い気がして堪らなかったのだ。

そんな桜夜に沖田は苦笑いをする。

「晴れて恋仲となったのに最近は山南さんに盗られてばかりですね ゴホ、ゴホ、ゴホ…」

沖田はわざと大袈裟に咳をした。

「咳してんのに仕事ばっかして、誰かさんが心配させるから癒されに行くんですーっ」

桜夜はべーっと舌をだして笑った。

「ほら、風邪ひいたら大変だって言ったじゃん。夜まで時間あるなら部屋で暖まってて。山南さんとこでお菓子が余ったら持ってってあげるよ」

桜夜がクスクス笑って沖田を追いやった。

「私は余り物ですか」

沖田は少し膨れながら戻って行った。

桜夜は大急ぎで洗濯を済ませ、山南の元へと向かう途中。

「私は断固反対ですっ!」

近藤の部屋から大声が聞こえてくる。

この声…山南さん?

こんなに声を荒げるなんて…。

桜夜の足が止まる。

な…何かヤバイとこに遭遇した?

桜夜はその場を後にしようとする。

その瞬間、近藤の部屋の襖が開き山南がいつになく不機嫌な顔で出てきた。

あ…

「桜夜さん…」

ど、どうしよう。気まずいよ。

すると山南はいつも通りの笑顔で桜夜の手からお茶を取る。

「今日は饅頭ですか。美味しそうですね。さ、行きましょうか」

そう言って部屋に向かい歩きだした。

桜夜は近藤の部屋を気にしながらも山南の後に続いた。
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