桜の下で ~幕末純愛~
「これなんだけど、どうしたらいいかしら?」

「あ、はい。じゃあ、私がやっときますよ」

…まだ馴れないってのは分かるけど、何で私?

今日はせっかく総司と一緒のお休みなのにぃ。

女中頭はナミさんだし、今日は居るんだからナミさんに聞けばいいのにな。

早く終わらせて総司のとこ戻ろう。

「お桜夜ちゃんは沖田さんと恋仲なの?」

突然明美に聞かれる。

…まぁ、隠す事じゃないからいいけど。今更、聞かれてもなぁ。

「はい。そうですよ」

「沖田さんは優しい?」

「ええ」

も、もしや総司狙い?

「よかったわね」

違うの?明美さんって分かんない。

「愛を知った剣士は弱くなるわ」

は?だーかーらっ、何が言いたいのよ。

「そうですか?」

「ええ。その愛が深い程、己の身を投げ出すの」

明美はクスリと笑った。

私、このテのタイプは無理だわ…。

「じゃ、終わりましたから。行きますね」

桜夜は急いでその場を後にした。

何が言いたいの?総司が弱くなるって言うの?

桜夜は沖田の元へ走った。

沖田はまだ縁側に座っていた。

「総司!」

駆け寄ると背中からギュッと抱き締める。

「どうしました? ゴホッ 桜夜が戻ったら団子を食べに行こうと思って ゴホ 待っていたのに」

総司は弱くなんてならないっ。

「おかしな桜夜ですね」

沖田は桜夜の腕をほどくと体を引き寄せ、膝の上に乗せる。

「そっ、総司?重いからダメだよ。それに体だって…」

「桜夜を支えられない程 ゴホッ 弱ってはいないと前にも言ったでしょう」

沖田は優しく笑うと桜夜のおでこを軽く弾いた。

もぉ~、この場合はデコピンじゃなくてチューするとこじゃないの?

「団子、行きます?それとも ゴホッ 布団がいいですか?」

ふっ、布団?

桜夜は真っ赤になって「お団子」と答える。

「それは残念です」

クスッと笑い、沖田が桜夜を下ろして立ち上がる。

「行きましょう」

桜夜は差し出された手を堅く握り返した。
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