桜の下で ~幕末純愛~
捌
桜夜が落ち込んでいる間にも情勢はどんどんと変わっていった。
王政復古の大号令。
十二日には徳川慶喜は大阪に下った。
王政復古?徳川幕府がもう終わるのは始めから分かってたけど…立ち直ったと思ったらこれだもんな。
そんな折、桜夜は近藤に呼ばれた。
近藤さんに呼ばれるなんて…。
仕事を終えた桜夜は近藤の部屋を訪ねる。
「近藤さん、稲葉です」
「ああ、入りたまえ」
「失礼します」
緊張しながらも部屋に入る。
「すまなかったね、呼び立てて」
そこには変わらない笑顔の近藤がいた。
ああ、近藤さんの笑顔にはいつも癒されるな。
こんな時に局長をそんな風に思っちゃ不謹慎かな?
近藤に促され、置かれた座布団に座る。
「総司はどうだい?」
「変わらずです。きっとこれからもっと悪くなるとは思います」
「そうか…」
きっと総司の事を聞きたいんじゃないよね。
桜夜は近藤が時々沖田の様子を見に行っていたのを知っていた。
近藤だけではなく、土方も。
「さて、本題に入ろうか。我々はじきに大阪に発たねばならない。桜夜殿はどうしたい?」
どうしたいって?新撰組を離れろって言いたいの?
「誤解しないでほしい。出て行けと言ってる訳じゃないんだ。ただ、この先はどうなるか分からない。しかし、桜夜殿ならこの先を考え、安全な場所に身を置く事ができるだろう?」
私の安全?そうか…ここまできたらもう戦続きだもんね…。心配してくれてるんだ。
「無駄だろ」
声と共に突然襖が開いた。
「トシ!声くらいかけんか」
「ああ、悪い」
土方はそう言ってドカッと腰を下ろした。
「こいつが総司から離れると思うか?引き離してみろ、地の果てまで追い掛けて来るだろうよ」
おいおい…人をストーカーみたいに言わないでよ。
まぁ、あながち間違いでもないけど。
「それにこいつの頭、足りねぇからな。これから起こる事、あまり覚えてないらしい」
ストーカーの次はバカ扱い?この口の悪さには時々カチンとくるんですけど?
桜夜は思わず土方を睨む。
「ちっとも怖くねぇぞ。本当の事だろ」
ククッと笑う土方。
分かってますけどね。私が新撰組に居られる様に言ってくれてるって事は…。
王政復古の大号令。
十二日には徳川慶喜は大阪に下った。
王政復古?徳川幕府がもう終わるのは始めから分かってたけど…立ち直ったと思ったらこれだもんな。
そんな折、桜夜は近藤に呼ばれた。
近藤さんに呼ばれるなんて…。
仕事を終えた桜夜は近藤の部屋を訪ねる。
「近藤さん、稲葉です」
「ああ、入りたまえ」
「失礼します」
緊張しながらも部屋に入る。
「すまなかったね、呼び立てて」
そこには変わらない笑顔の近藤がいた。
ああ、近藤さんの笑顔にはいつも癒されるな。
こんな時に局長をそんな風に思っちゃ不謹慎かな?
近藤に促され、置かれた座布団に座る。
「総司はどうだい?」
「変わらずです。きっとこれからもっと悪くなるとは思います」
「そうか…」
きっと総司の事を聞きたいんじゃないよね。
桜夜は近藤が時々沖田の様子を見に行っていたのを知っていた。
近藤だけではなく、土方も。
「さて、本題に入ろうか。我々はじきに大阪に発たねばならない。桜夜殿はどうしたい?」
どうしたいって?新撰組を離れろって言いたいの?
「誤解しないでほしい。出て行けと言ってる訳じゃないんだ。ただ、この先はどうなるか分からない。しかし、桜夜殿ならこの先を考え、安全な場所に身を置く事ができるだろう?」
私の安全?そうか…ここまできたらもう戦続きだもんね…。心配してくれてるんだ。
「無駄だろ」
声と共に突然襖が開いた。
「トシ!声くらいかけんか」
「ああ、悪い」
土方はそう言ってドカッと腰を下ろした。
「こいつが総司から離れると思うか?引き離してみろ、地の果てまで追い掛けて来るだろうよ」
おいおい…人をストーカーみたいに言わないでよ。
まぁ、あながち間違いでもないけど。
「それにこいつの頭、足りねぇからな。これから起こる事、あまり覚えてないらしい」
ストーカーの次はバカ扱い?この口の悪さには時々カチンとくるんですけど?
桜夜は思わず土方を睨む。
「ちっとも怖くねぇぞ。本当の事だろ」
ククッと笑う土方。
分かってますけどね。私が新撰組に居られる様に言ってくれてるって事は…。