桜の下で ~幕末純愛~
新撰組が苦しい戦いを強いられている頃、大阪城でも辛い看病が続いていた。

沖田も近藤も高熱を出していた。

更に沖田は少量ではあるが喀血。

医師からは次に喀血したら命の保証はできないと言われてしまった。

マズイ。これはかなりマズイよね。

いくら水で冷やしても、医師からの薬を飲ませても、よくなる気配はない。

私が焦ったって治る訳じゃない…落ち着け、私!

そうだ、鎮痛剤!確かあと2錠残ってたはず。

前の総司の事を考えると飲ませていいのか悩むけど…悪くなるよりはマシだよね。

え~いっ!考えてるなら飲ませちゃえっ!

桜夜は鞄の中からピルケースを出す。

「総司。近藤さん」

互いの布団に距離を置いてはあるものの、同じ部屋で療養している二人に声をかけた。

同室なら二人を確実に看ていられると桜夜が頼んで二人を一緒にしてもらっていた。

「これ、飲んで下さい」

桜夜が鎮痛剤を差し出す。

「これは?」

近藤が聞く。

「未来の薬です。効果があるのかは分かりませんけど…飲んでみる価値はあると思います」

怪しまれるかな?嫌でも飲んでほしいな。

「石田散薬みたいに苦くありませんから」

桜夜は少し笑って言った。

まずは近藤に鎮痛剤を飲ませ、次に沖田に飲ませる。

「じきに眠くなってくるかもしれません。そしたら寝ちゃって下さいね」

その後、近藤は丸一日。沖田は二日間眠り続けた。

二人共、目が覚めると熱は下がっていた。

近藤の貫かれた肩はそのままだったが、体のダルさは抜けた様だった。

「随分と楽になったよ」

近藤が笑う。

よかった。またその笑った顔が見れた。

「本当です。体が軽くなった気がします ケホ」

沖田が布団から体を起こす。

完全に咳は止まらなかったね…。

そりゃそうだ。ただの鎮痛剤だもんね。

でも…咳は少し減った?

「熱が下がって本当によかったです」

桜夜が安堵のため息をついた時、新撰組が大阪城に着いたとの知らせが入った。

間もなくして土方が現れる。その表情は冴えない。

「稲葉、負傷者が多い。医者が診てくれているが、その後の看病を頼む」

そう言うと近藤と沖田の方へ向き直る。
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