桜の下で ~幕末純愛~
敗戦の報告だよね…。私はきっと席を外した方がいい。

「看病、行ってきます」

桜夜はその場を去った。

「近藤さん、総司…すまない……勝てなかった」

土方が頭を下げる。

「トシ…」

「土方さん…」

―桜夜は分かっていたのでしょうね―

「トシ、ご苦労であった。気に病むな。立て直して次に備えよう」

「ああ」

一方、負傷者の元に向かった桜夜はその中に山崎の姿を見つけ驚く。

「烝くん?!」

山崎の傍に駆け寄る。

「桜夜。…しくじってもうた……情けないなぁ」

撃たれてる。酷い…これじゃもう…。

桜夜が表情を曇らせた。

辺りを見回せば多くの隊士が手当てを受けている最中だった。

怪我人は烝くんだけじゃない…辛いけど手伝わなきゃ。

「烝くん。またすぐ来るから」

桜夜は手当ての手伝いを始めた。

その頃、江戸城内はで軍議が開かれる事となった。

昨夜、徳川慶喜が密かに脱出。江戸へと向かってしまったのだ。

近藤も土方に付き添われ参加。

近藤は徹底抗戦を主張するも脱出を事前に知っていた重臣達に開城をする様に命じられていると説得され、江戸へ退却せざるを得なかった。

桜夜が部屋に戻ると江戸への退却を聞かされた。

「江戸?退却??」

おっさん…逃げたのかよ…。

そして九日に永倉・原田等の本隊が【順陽丸】で出航。

十日に近藤・土方と負傷者が【富士山丸】に乗り込んだ。

桜夜も沖田と共に富士山丸へと乗船。

富士山丸は十日に出航予定であったが風が悪く、翌日の十一日に出航した。

こうして新撰組は海路で江戸へと向かった。

桜夜は負傷者の看病で船内を走り回っていた。

烝くんが思った以上に酷い…。船で江戸までってどのくらいかかるの?

江戸には松本先生がいるって聞いたし、早く診てもらいたい。

夜になり、少し手が開いた桜夜は甲板に出た。

夜風に当たっていると沖田が現れた。

「ケホ 桜夜。休まないんですか?」

「総司!ダメじゃない!何でこんなとこに来るの!!風が冷たいよ。戻ろう」

桜夜は慌てて沖田を戻そうとする。

「そんなに病人扱いしなくてもいいじゃないですか コホ」

「病人扱いじゃなくて病人なの!行こう」
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