桜の下で ~幕末純愛~
先陣の順陽丸が十二日に品川へ入港。

後陣の富士山丸は十四日の夕方に横浜へ入港し、重傷隊士を入院させた。

再び出航し、十五日に品川へ入港した。

桜夜と沖田は松本良順の居る神田へと向かった。

翌日の十六日、近藤と土方は江戸城へ向かい、敗戦の報告をする。

刀の時代が終ったと告げた。

二月に入り、新撰組は徳川慶喜の警護に就いた。

徳川慶喜は新政府への恭順を決めており、上野寛永寺で謹慎をしていた。

沖田と桜夜は松本の計らいで千駄ヶ谷の植木屋で療養生活を送っていた。

この頃から土方が新撰組にも洋装を取り入れる様になった。

そして二十七日、甲州への出陣が決まる。

近藤は【大久保剛】土方は【内藤隼人】と名を改め、新撰組も【甲陽鎮撫隊】と改名した。

療養中の沖田にも甲州出陣の情報が入る。

「出陣する?!」

桜夜が大声をあげる。

「ええ ケホ このところ随分と調子もいいですから」

「ちょっと待ってよ。調子がいいって…治った訳じゃないんだよ!」

沖田が少し困った顔をする。

「ええ。こんな体でも ゴホ 私は武士ですからね」

武士…そんな風に言われちゃったら止められないじゃない。

「分かってくれますね? ケホ 桜夜は此処で待っていて下さい。必ず戻りますから ゴホ」

総司の居ない間か…。

「私、ナミさんの所に行ってきてもいいかな?どうやらここから近いらしいの」

桜夜の言葉に沖田が驚く。

「一人でですか?ダメに決まってるでしょう!危険です ゴホ」

「平気だよ。明るいうちに行くし、脇差もクナイもある。土方さんと烝くんが居る様なものだよ。それに土方さんが追い付くのが大変な位、足が速いんだから。いざとなったら逃げるよ。ナミさんが無事かどうか確かめたいの。お願い!会ったら直ぐここに戻るから」

桜夜の勢いに負けた沖田は溜め息をついた。

「では、お互いに必ず此処に戻ると約束しましょう。 ケホ 必ずですよ」

「はい。必ず。総司の方こそ約束を守ってよね」

そうして沖田は隊に合流し桜夜はナミのところへ向かった。
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