桜の下で ~幕末純愛~
家に着くと沖田は待ちきれない様子で話し出す。

「“ぷりん”ください」

おぅっ。直球だよ。早くしなきゃ暴れ出しそう。

「プリンとシュークリーム、どっちがいいですか?」

「どちらもです」

へ?どっちも?ま、いっか。あげとこ。

スプーンを出してきて、プリンとシュークリームを渡した。

「どうぞ。こっちがプリン、こっちがシュークリームです。プリンはこれを使って、シュークリームは手掴みで食べて下さい」

「いただきます」

パクリとまずはプリンを食べた。

沖田の目が輝いた。

「これが“みらい”の甘味…」

次にシュークリームを食べる。

「“みらい”の甘味は美味しいですね」

ぷっ。口の端にクリームついてる。カワイイ!

「こっちではデザートとかスイーツとか呼び方は色々ですよ」

桜夜の話を聞いているのか、いないのか…プリンとシュークリームはあっという間に沖田の口の中に消えていった。

こらこら、聞いてんのか~?

心の中で突っ込みを入れて桜夜は自分のプリンを食べようとした。

すでに食べ終えてしまった沖田がジーっと桜夜…ではなく、プリンを見ている。

あげないよ?プリン、大好きなんだからっ。

「…食べますか?」

負けた…幕末のイケメンに負けた。

「いいんですかっ」

ダメとは言えないよ。その顔で見られたら。

「どうぞ」

桜夜はプリンを差し出した。

「ありがとうございます。では、遠慮なく」

あぁ…さようなら、プリンちゃん。

桜夜のプリンはあっという間になくなった。

「美味しいですね。私はこちらの“しうくりぃむ”が特に気に入りました」

沖田は食べ終えたシュークリームの袋を指してまだ食べたいという顔をした。

私のプリンを奪っておいて…シュークリームかいっ!おかしいでしょ、そこ。しかも食べ足りない顔だよ、あれ。どんだけ甘党?

桜夜は今度こそ突っ込みたかったが、あまりにも嬉しそうな沖田を見ると言えなくなってしまった。
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