桜の下で ~幕末純愛~
―眠ってしまいましたか―

沖田は桜夜の髪をそっと撫でる。

桜夜を起こさない様に動かず、窓の景色をずっと眺めていた。

―――――

「桜夜、起きて下さい。着きますよ」

沖田に揺り起こされ、ぼんやりと目を開ける。

えっ?着く?

車内という事を忘れ勢いよく立ち上がり、座席の狭さにつまずいて倒れそうになった。

「桜夜っ」

沖田に抱き締められる形で助けられた。

「全く…気を付けてください」

―だから目が離せないのです―

「ハイ。ごめんなさい」

そうしているうちに新幹線はホームへ着く。

ガイドの案内に従い、まずは旅館へ。

荷物を置き、昼食を済ませて初日のツアー開始だ。

ツアーは京都の有名どころを案内していく。

あっという間に初日の観光は終わった。

―夜―

「ねぇ、明日はどこ行きたい?」

桜夜と沖田は旅館の窓を開け、夜風に吹かれながら景色を眺めていた。

「そうですね…。明日までに考えておきます」

総司…京都に着いてから、沈んだ感じだよね。

京都に来たらまずかったかな。

「夏は私が生まれた月なんですよ」

沖田が静かに話し出した。

総司の誕生日?そういえば聞いた事なかった。

「そうなんだ?夏って何月何日?」

「ふっ。秘密です」

なんじゃ、そりゃ。

「何よ。教えてくれなきゃお祝いできないじゃん」

「お祝いは結構ですよ。桜夜にはお世話になりっぱなしです。毎日お祝いしてもらっている様なものですからね」

「素直じゃないんだから」

桜夜が膨れると沖田は

「お互い様ですよ」

と笑った。

やっぱり少し元気ないよね。聞いてみようかな。

「ねぇ。京都に来て、何か感じた?」

思いきって聞いてみた。

沖田は苦笑いをして答える。

「いいえ。全くです」

「そっか」

「はい。でも仕方ないかもしれませんね。私の生まれは江戸で、京にはふた月程しか…すぐにタイムスリップしたのですから」

え?そうなの?じゃ、ナゼ京都?

「さ、明日に備えて早く床に着かなければ」

沖田はそう言うと布団に入ってしまった。

…緊張感ゼロ?はぁー、そーだよね。まるっきり子供扱いだもんね。

桜夜はため息をつきながら眠った。
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