桜の下で ~幕末純愛~
「桜夜、朝ですよ」

―昨日から桜夜を起こしてばかりですね―

全く起きない桜夜に沖田はため息をつく。

「起きないと襲いますよ」

桜夜の耳元で囁いた。

「う…ん…」

―本当にこの子は…無防備にも程があります―

沖田は桜夜の鼻と口を押さえた。

「ブハッ!なっ、何すんのよっ」

「おはようございます」

あ…京都だった。って…総司に寝てるとこ見られたっ。

「桜夜は毎朝どうやって起きているのですか?学校に遅刻しないのが不思議です」

ええ、私もそれは不思議です。

「寝過ごした?」

「いいえ。しかし急いだ方がいいですよ」

時計を見ると8時を過ぎた頃だった。

「すっ、すぐ着替えるっ」

でも、どこで着替える?とりあえず…

ウロウロしている桜夜を見て沖田が笑う。

「見ませんから。早く着替えなさい。桜夜を見ても欲情しませんから」

よっ、よっ、欲情っ…。トドメの一撃をくらったよ…。

そうだよね…。総司からしたら私はお子さまだ。

そんな事言われたってここで着替えられる訳ないじゃん。とりあえず、ユニットバスでいいや。

急いで着替えて部屋を出る。

バタバタとした朝が終わり、自由行動の時間になった。

「な…なんか忙しかったね」

「桜夜のせいでしょう?」

「う゛…。はい」

明日は総司より早く起きよう。

「行きたいとこ、決まった?」

昨日、様子がおかしかったのも気になり、遠慮がちに聞いた。

「壬生寺に」

「壬生寺?」

壬生寺って確か…いいのかな?

桜夜の思うところが分かったのか、沖田が静かに言う。

「大丈夫ですよ。何か探る訳ではありません。ただ見たいだけです」

京都に来たいって、そういう事になるのは分かってたもんね。

総司を信じよう。

二人はガイドマップを手に壬生寺へ向かった。
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