桜の下で ~幕末純愛~
うっ、飲んでないのに匂いだけで酔った気分…

「ちょっとすみません。休憩させてください」

桜夜はそう言って広間を出て縁側に座り夜風に当たった。

「こんなところで何してんだ。お前の為の宴だろ」

そこに土方が現れる。

ひじぃだ。疲れてんのにぃ。

「すみません。匂いに酔ってしまいました」

「何だ、呑んでねぇのか?」

ん?こっちは未成年の飲酒っていいのかな?

「20才を越えないとお酒飲んじゃいけないんです」

「ふんっ、めんどくせぇ時代だな」

そうかな?気にした事なかったけどな。

暫くの沈黙。

「平気か?」

土方がぽつりと言った。

んん?幻聴?ひじぃが何か言ったぞ?

「え?」

思わず聞き返す。

「てめぇは人の話を聞いてろ」

「………」

「何だ」

「い・な・ば・さ・よ です」

「しつこい奴だな。戻るぞ稲葉」

ひじぃが名前呼んだっ!

桜夜が驚いて呆然とする。

「何してんだ。行かねぇのか」

「もしかして土方さん心配してくれてます?」

一瞬、土方の表情が焦りに変わる。

「阿呆。ぼさっとしてねぇで戻るぞ」

土方は足早に広間へ戻ってしまった。

何か一瞬にしてひじぃのイメージがよくなったかも…。

桜夜も土方を追う様に広間へ戻った。

戻ったはいいが、相変わらずの酒臭さに入るのをためらう。

くっさーいっ。ちょっともう限界かも…。

部屋に戻りたいな。総司に言ってみようかな?

桜夜は沖田を探す。沖田は山南と話ながら呑んでいた

あ、いた。

誰にも…特に原田、永倉、藤堂に見つからない様に広間の端を通る。

「桜夜ちゃん、みーつけた」

いきなりガバッと後ろから抱きついた藤堂。

「とっ、藤堂さんっ」

「またまたぁ。平助って呼んでよ。桜夜ちゃん、何処行ってたの」

うっわっ、すっごい酔ってる。お酒臭いし、重いっ。

「その辺にしてあげてください」

ベリッと桜夜と藤堂を引き剥がしたのは沖田だった。

総司!助かった。

「左之さん、新八さん、平助をちゃんと見ててくださいよ」

剥がした藤堂を二人のところへ引きずって行く沖田。
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