桜の下で ~幕末純愛~
そして芹沢一派崩壊の口火が切って落とされた。

「新見さんが切腹…」

桜夜は沖田と夜、部屋で金平糖を食べながらそれを聞いた。

「はい。桜夜は知ってましたか?」

金平糖食べながら聞きたい話じゃないなぁ。

新見さんの事は覚えてなかったな…。そっか…。

「ううん。それは多分本にも載ってたかもしれないけど、私は覚えてなかったや」

「桜夜、完璧じゃないですねぇ」

「…そりゃ無理だよ。他の事だって大体でしか分かんないもん。細かい日付はさっぱり」

総司は平気?人が死んでも…。

この時代はそういうものだって、それだけで片して良い問題なんだろうか…。

「あまりいい話ではなかったですね。事情はどうあれ、誰かの死ですからね」

桜夜の顔が少し曇ったのを感じた沖田。

「私は芹沢さん、あまり嫌いではないんですよ」

え?

「まぁ、確かにやる事は度が過ぎますけどね」

沖田は苦笑いにも似た笑いを溢した。

そして14日、会津潘より芹沢鴨処置の密命が下された。

その夜、近藤の元に土方・山南・沖田・原田が呼ばれた。

「他に案はないのだろうか…」

近藤が戸惑いながら言う。

「今更何言ってんだ。奴等にどれだけ煮え湯を飲まされてきたか分かってんだろ。それが会津潘からの命が下ったんだぜ、これを逃してどうすんだ」

土方が反論する。

「む…しかしだな…」

それでも、まだ他にないかと近藤は悩んでいた。

「近藤さん、あんたを唯一の局長にする。これを逃す手はねぇんだ」

「………」

「今回は近藤さんは残ってほしい。万が一失敗があった場合、局長の面が現場にあっちゃ困るからな」

誰も土方に反対する者はいなかった。

「まぁ、此の人選で失敗するとは思えませんけどね」

沖田がクスリと笑う。

「角屋で宴会を開き、泥酔させた後、襲撃する」

強い口調で話を進める土方。

「決行は明後日、失敗は許されねぇ。いいな」

こうして芹沢鴨暗殺の手筈は整えられた。
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