桜の下で ~幕末純愛~
芹沢一派が居を構える八木邸。

そこで改めて呑みなおす。

ここでも土方は芹沢に酒を勧めた。

芹沢の脇には愛妾―お梅―が寄り添っている。

芹沢は新見という片翼をもがれ、弔いとばかりに酒が進む。

とうとう座っているのも儘ならなくなり、芹沢はお梅と共に床に入った。

芹沢と共に屯所に戻っていた平山、平間も島原から連れ帰った遊女と共に隣室で眠ってしまった。

―時が来た―

土方、沖田が芹沢を。山南、原田が残りの二人を狙う。

四人は一気に斬り込んだ。

芹沢に対し、まず沖田が一太刀目を浴びせる。

が、キン―という音と共に芹沢の脇差で止められる。

「ほう、来たのはおぬしらか」

芹沢が不敵な笑みを浮かべた。

―ちっ、あれでも足りなかったか―

「筆頭局長を襲撃とは大したものよのう」

土方は刀を構え直す。

「局長は一人で十分だ」

声と共に土方が斬り込んでいく。

芹沢も刀を持ち直し、それに応じるが、さすがに酔いが回り体がグラついた。

そこに再び沖田が襲いかかる。

―ザンッ―

肉を裂く音が闇に響き、芹沢が足を付いた。

酒も入っていたからか異常ともいえる出血。

土方が最後の一太刀を浴びせ、芹沢の鼓動は止まった。

一部始終を見ていたお梅は芹沢が殺された恐怖と現実に目を見開いている。

土方はお梅の元へ歩み寄ると

「誰一人生きてちゃならねぇんだ」

そう言い、お梅に刀を向けた。

隣室では山南、原田が平山の首を落とし、平間は傷を負ったものの脱走。

こうして芹沢鴨暗殺は幕を閉じた。

桜夜は灯りは消したもののいつまでも眠れずにいた。

襖を少し開けてみても月明かりはなく、不安だけが襲ってくる。

再び布団の中に入ると目を閉じて雨音を聞く。

暫くすると雨音に混じって足音が聞こえてきた。

帰ってきた。

やがて沖田の気配がする。

沖田は何も言わず、桜夜に背を向けて隣に敷いてあった布団に入った。。

桜夜は思わず後ろから沖田を抱き締める。

「桜夜?」

沖田は少し驚いた声をすると

「“これ”は知っていたのですね…」

と呟いた。

「今日だけ特別」

総司の心が泣いてる気がするから。

桜夜はそう言って抱き締め続けた。
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