桜の下で ~幕末純愛~
芹沢鴨静粛後、近藤を唯一の局長とした壬生浪士組は会津潘主 松平容保より新しい名をもらう事となる。

―新撰組―

それに伴い、新設された「総長」に山南が就く事となった。

そっか、ここからが新撰組なんだ。

皆、嬉しそう。きっと今夜は呑むんだろうな。

その夜は桜夜が思った通りの大宴会。

相変わらず酔った藤堂は桜夜にまとわりつき、沖田がそれを引き剥がす。

笑顔が絶えなかった。

はぁ、また臭いだけで酔った感じ。

桜夜はこっそり抜け出し、縁側に腰を下ろす。


「やっと言えますね、新撰組って」

沖田がやってきて隣に座る。

「うん。総司がタイムスリップして、すぐに言っちゃったけどね」

会ったばかりの頃を思い出し、思わず吹き出してしまった。

「懐かしいですか?」

「そりゃ、ねぇ」

桜夜は不審者だった時の沖田を思い出していた。

「総司、カンペキ不審者だったしね。何を見ても質問攻めでさ。コンビニに初めて連れてった時はヒヤヒヤしたよ」

「今、思えば納得いきますけどね。不審者扱いも」

二人は未来を懐かしみ、少しだけ笑った。

「そろそろ皆、寝込んでるんじゃない?」

胸元に忍ばせてある時計を見て桜夜が言う。

「でしょうね。今日は特に皆さんお酒が進んでましたから」

桜夜は立ち上がり

「ちょっと片そうかな。じゃないと明日の朝、ナミさんと私が大変」

笑って言うと広間に戻っていった。

―桜夜は未来に帰りたいのでしょうか―

ぽっかりと浮かんだ三日月を見ながら沖田は思った。

―手放したくない―

三日月が雲に隠れる。

夜風は少し冷たく感じる様になり、秋が近い事を知らせた。

―もうじき秋ですか。桜夜の誕生日ですね―

沖田は雲から再び顔を出した三日月にポツリと話しかけた。
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