加害者な君へ、ありがとう
曖昧な態度
あれから一睡も出来なかった
いつもの習慣を遣り遂げるだけでも
今日は何だか一苦労だった
目覚めてから朝食を食べて、
毎日のように玄関で靴を履きながら
「行ってきます」
と台所にいるお母さんに行った
いつもより小さい声でそうつぶやくと
お母さんがひょこっと
洗面所の方から顔を出し
「いってらっしゃい」
と笑顔でほほえんだ
今日は本当に微笑んでいた
いってらっしゃいの合図と共に
何だか嬉しさが込み上げてきた
「…っ行ってきます」
お母さんに今までないくらいの笑顔を向けると
お母さんに背中を向け
玄関のドアを開いた
通学路を歩きながらずっと
矢塚さんが学校に来ていないことを祈った