加害者な君へ、ありがとう

ガラガラッ


教室のドアを開けると一斉に
クラスの人達が振り向くのかと思いきや
全く平和だった日々と変わらず
だれも振り向くこともなかった

あのリーダー的人達だって
振り向くことをせず
数人と話をして笑い合っていた



「(…よかった)」


不安が無くなり
安心の溜め息を漏らそうとした瞬間
後ろから矢塚さんの声がした


「っ!!悠里っ!おはようっ」


あの時と変わらず
私の席まで飛んできて大声でそういった


「っ…!!」


私は直ぐ様周りを見渡した

視線はやっぱり
私に注がれていた


「…?悠里?」

「あ、あぁ、…おはよう」


「…?どうしたの?具合悪いの?」


「う、ううん、なんでもないよっ」


見え見えの行動に
何かを感付いたような
素振りをする矢塚さん

慌ていつも通り話をふる


「あ、…それより続けて休んでたけど
大丈夫だった?」


「うん、平気だよ。」



何だかその言葉に耳を疑った

初めて話掛けられた時に発した
あのドスのきいた声を私の耳は捕えた


あからさまに態度が違う
さっきまで高い声で
楽しそうな声を出していたのに
今出したのは確実に機嫌の悪い
素の声だろうと思われるものだった


「……」

「…あ、矢塚さんっ
ど、どうしたの?」

「……」


一点を見つめ
何かを睨み付けるような形相をした



これが
矢塚さんの裏の性格…?

今にも誰かを
あやめてしまいそうなくらいの形相をし
声を低く変え何かを睨み付けていた


背筋がひんやりした



私の知ってるあの矢塚さんじゃ、ない


全く状況が飲み込めなかった
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