私vs国連
”わたしたち国民は、国連加盟国の諸国民との絆を深め『平和』のために発言し、行動しなければならないのです!!”
壊れかけの古いラジオから流れてくる、平和という『夢』を語る愛しい夫の声。
見上げれば、『あの日』のような青い青い空がどこまでも続いていて――――
輝く太陽のまぶしさに顔の上で掲げていた右手を、女は空に向かって真っ直ぐに伸ばす。
少女と繋いだ左手にきゅっと力が込もった。
「ねえ、あなた……
掴めないからこそ『夢』と呼ぶのかしら……」
また、涙が込み上げて来る。
女の瞼の中、
青い世界がぐにゃりと歪んで、消えた。
【完】
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