私vs国連
 

その日、一人の女が大きな包みを持ってとある国の貧しい村を歩いていた。


決して派手では無いが仕立ての良い服に、整えられた髪。


およそこの村に似つかわしくも無いその女を、村人は嬉しそうに笑顔で受け入れ、話しかける。


「これはこれは奥様……、こんにちは!」


「こんにちは」


女が笑顔で返事を返した時、村人は嬉しそうに持っていたラジオを女に向けた。




”……「私達」は、平和であらねばなりません。
国連は、安全保障理事会のその価値と道徳的権限を堅持し……”




「今、まさにあなたのご主人の演説を聞いていたところです」


壊れかけた古いラジオから聞こえるその声に興奮しながら話す村人に、女は少し照れながら困ったような笑顔を見せた。


「いやまったく、素晴らしいご主人ですな。で、今日も『メイ』のところへ?」


「ええ」


「……ご主人に負けないくらい、奥様も素晴らしい!」


感激したように大きな声を出す村人に軽く会釈をして別れを告げると、女はまた足早に『目的地』へ向かって歩きだした。




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